Night→Morning 2 ※R18

 アパートに戻ると、すぐに料理にとりかかった。セブルスが空腹だと
訴えたからだ。今住んでいるアパートは家賃の安さが魅力で借りた
が、独立した寝室があり、老朽化しているとはいえ一通りの設備は
ついている。キッチンにも小さなオーブンがついているので自炊には
便利だ。セブルスがワイシャツの袖をまくって手伝うと申し出たので、
フライ用の馬鈴薯の皮むきをお願いした。セブルスは器用にペティナ
イフでするすると芋の皮を剥いていき、ボールの中をじっと見つめて
もう一個追加したり、私の動向をさりげなさを装いながら注視してい
るようだ。私は頭の中で大まかな進行スケジュールを頭の中で立て
て、挽き肉と刻んだ玉葱を炒めたり、トマトソースやマッシュポテトを
作りながら、最初にビールとセブルスのリクエストであるポテトと鱈を
揚げて出した。
「これ食べといてよ、次はパスタだからね」
座っているセブルスと私は立ったままでグラスを合わせて乾杯する
と、セブルスはビールを美味そうに飲んでから、フォークでフライを
口に運んだ。鱈にはたっぷり酢をかけるのがセブルスの好みだ。
空腹だと言っていただけあってセブルスは黙々とフライを食べた。
それでもガーリックと胡椒の香りが効いたトマトソースのパスタを作
っている間中ずっと背中にセブルスの視線を感じていた。
熱々を食卓に運び、私も一度席に着いて一緒に食べはじめた。
セブルスは口に運ぶたびに何やら肯いていて可笑しかったが、気
に入ってくれたということなのだろう。
「懐かしさから缶詰なぞ買わなくて本当によかった」としみじみとした
口調で呟くのでついに笑ってしまった。セブルスも苦笑する。アルコ
ールをワインやウィスキーに代えながら、私たちはゆっくりと時間を
かけて食事をした。
セブルスは学会でスラグホーンの名刺を持った何人もの魔法使いか
ら共同研究の話を持ちかけられてうんざりした、スラグホーンはその
うちパイナップルの砂糖漬けの倉が建つに違いないとか、そういえば
最前列中央に何故かグリフィンドールのハーマイオニー・グレンジャ
ーが陣取っていて各発表ごとにいちいち挙手して質問するので閉会
が予定より二時間も遅れてすっかり腹が減ってしまった。グレンジャ
ーはお前も知っての通り魔法省勤務だが魔法薬とは無関係なセクシ
ョンにいる筈だ。興味がある議題なので有給をとって聴きにきたと言
っていたがどうも怪しい。グレンジャーは急進的な差別解放論者な
ので魔法省内の不穏な動きを察知して偵察にきたのではないか。
隠れていないばかりか、目立ちまくっていたが或いはそれも作戦な
のかもしれないなど毒舌を冴えわたらせながらよく食べた。それも
ちゃんと味わってくれているのが見ていてわかるので私は内心嬉しく
思いながら適当に相槌を打ち、一緒に食べて、飲んだ。私は時々席
を立って狭いキッチンに立ち、料理を作った。
料理というほどのものでもない、マッシュルームにレモンとオイルを
かけただけのサラダや、炒めた挽き肉と玉葱にマッシュポテトをかぶ
せてオーブンで焼いた簡単なシェパーズパイをセブルスは喜んで食
べてくれた。いつも青白い頬はアルコールに火照り、目も潤んでリラ
ックスし、ホグワーツ時代の厳格なセブルスを知る人が見たら驚愕す
るに違いない。
 私がデザートにアップルクランブルにカスタードソースを添えて出す
と、セブルスは目を丸くした。
「りんごを刻んでいたのは見ていたがこんなものまで作っていたの
か!前にターキーのサンドイッチにアップルソースを作っていたから
てっきり肉料理のソースにするのかと思っていた」
「すごく簡単なんだよ。パイだと手間がかかるけど。カスタードソース
はインスタントだしね」
実はスーパーで買った食材を袋から出していると、買った覚えのな
いカスタードパウダーの缶がごろりと出てきて驚いたのだ。
セブルスは熱心にインスタントのカスタードパウダーの缶を見ていた
ので好奇心からこっそり買い物かごに入れたに違いない。セブルス
はフォークでまずアップルクランブルだけを食べてから、次にカスタ
ードと一緒に食べた。それからカスタードだけを舐めてみてから、
「よくできているものだな。マグルの科学力には一目置かざるを得な
い。アップルクランブルにはカスタードソースが重要だということもわ
かった」と真顔で感想を述べたので可笑しかった。
夜もかなり更けた頃、私が食器を洗っている間、セブルスは昼間の
疲れが出たのかうとうとと微睡んでいた。座ったまま下を向いて居
眠りしているので、シャワーを浴びるか、そのまま眠るかと声をかけ
ると、シャワーという返事があった。
「こっちが風呂だよ。シャワーしかついてないけど今夜は我慢して。
タオルはここ。えっと下着は僕のを…」
と私が寝室から下着をとってこようとすると、
「どうせ脱ぐからいい」
と言うとセブルスはさっさと服を脱ぎ捨て風呂場に消えた。寝ぼけて
いるというわけではないだろう。私は期待していた展開だというのに
戸惑いを覚えつつ、パジャマ代わりにと自分のシャツを取ってきて
タオルの上にかけておいた。泊まるからにはそういう行為をすること
になるかもしれないという期待はあったが、別になくてもおかしくない
のが私たちの関係だ。セブルスは性交渉に深い意味を持たないタイ
プで、淫蕩でもあり、淡泊でもある。
 セブルスの後で私もシャワーを浴びた。髪を簡単に杖で乾かしてか
ら寝室に行くと、セブルスは寝台に腰掛けてタオルで髪を擦って拭
いていた。身長はさほど変わらないのにセブルスは痩せているので
私のシャツが余り、白く滑らかな胸元が大きくのぞいている。
「髪が傷むよ」
「女子じゃあるまいし」
そう言って笑ったセブルスは部屋の隅に置いてある古びた大きな
トランクに目を留めた。
「ホグワーツにいる時も部屋に置いてあったな」
「よく覚えていたね。私は引っ越す時はこれに全財産を納めて移動
するんだよ。あぁ、あとテントもね」
「テントって魔法のテントか?」
「そうだよ。マグルのキャンプ用はいくらなんでもちょっとね」
「あれは普通の家と同じだろう。ルシウスの持っているテントなぞ庭
付きで孔雀までいたぞ」
「そんな贅沢な代物じゃないよ。簡易キッチンとベッドがついてる簡
単なやつ。雨露は十分しのげるけど水道がないから不便なんだよ」
「そうなのか」
何故か残念そうなセブルスからタオルを取り上げて、代わりにまだ
湿っている黒髪を拭きながら、頬や首筋に口づけを落とすと擽ったそ
うに頭を揺らす。セブルスはとても感じやすい。そういう風に生まれ
ついたのか、誰かが時間をかけてそういう身体にしたのか。その疑
問はいつも私を苦しめるのだが、セブルスが特定の人間に縛られて
はいないことも知っている。シャツをはだけ片方の乳輪に口づけ吸い
つくと堪えきれないというように喘ぎ声が漏れた。吸いながら乳首を
舌で嬲り、もう片方の乳首を指で摘んだ。私は唇と指でセブルスの
敏感な胸を愛した。セブルスは私の狼藉を許し、私の髪を指でまさ
ぐりながら喘いでいた。興奮しているセブルスの皮膚からは雄を誘う
蜜のような匂いが溢れてくるのでいつでも身体中を舐めたくなる。
左右の乳首が濃く色づいて尖ると、私たちは向かい合い、口づけあい
ながらお互いの性器を手で高めあい、一度目の放出を済ませた。
乱れた呼吸が落ち着くと、次にどうするか相談する。セブルスは胡座
をかいた私に背を向けて座りたいと言い、私は向かい合わせがいい
と言った。
「それだとお前はまた胸を吸うだろう。今度は繋がった部分で楽しみ
たい」
後ろ向きでも指で弄るよと言うと、両手を縛っておくと脅された。胸は
触らないと約束して、セブルスは私の膝に跨った。薄い双丘を揉み
しだき、唾液で濡らした指で蕾を解してから、つぷりと中に入れると
セブルスは私の胸にもたれ掛かってきた。セブルスの中はきつく硬
く閉じていて、そのことは私を喜ばせた。最近、誰もセブルスの中に
入っていないのだ。私の指がセブルスの中で馴染むのを待ってゆっく
りと抜き差しして馴らした。息を詰めて違和感を堪えていたセブルス
の表情が、粘膜が擦られる刺激に次第に溶けていく。指を引き抜き、
細い腰を両腕で持ち上げ、やわらかく解けた蕾に高ぶりをおしあてる
とセブルスは自ら腰を下ろしていき、私を根本までくわえ込み吐息を
漏らした。私も高ぶりを狭くきつい場所に押し込められ呻く。
「痛くない?」
「大丈夫だ。動くのはもう少し待ってくれ」
セブルスのしっとりと汗ばんでいる滑らかな背中を撫でたり、顔や髪
に口づけて落ち着かせて待っていると、ゆっくりとセブルスが腰を揺
らしだした。私が下から軽く突くと艶やかな声が漏れる。セブルスの
腰の振りに合わせて、徐々に強さを増しながら突き上げると、最後は
どちらも夢中になって絶頂を迎えた。ぐったりと弛緩して私に凭れて
いるセブルスをそっと横たえる。セブルスは不意に腕を上げ、ほっそり
とした長い指で私の胸を撫でた。私は体中に傷痕がある。人狼化する
時、自分でつけたものだ。人狼薬がなかった頃には、満月期には隔離
されていたのだが、襲う相手がいないので自分を傷つけていたのだ。
セブルスは黙ってその傷跡を何本も指先で辿ってから、
「これは自分でつけたのだな」
と静かな声で尋ねた。
「うん、昔ね。醜いだろう」
「私はこれはお前の理性の証だと思う。お前の肉体は人狼化しても
心は人の理性を保っていた。だから自分の身を傷つけたのだ」
傷に触れるセブルスの指先はとても優しくて、泣きそうになった。私は
長い間ずっと泣きたかったのかもしれない。
「でも、誰かを襲ってしまうかもしれなかった。誰かにこんな醜い傷を
つけてしまったかもしれないんだよ。そういう欲望があった。殺してし
まったかもしれないんだ」
私は泣かなかったが、涙で湿ったような惨めな声で告白した。
「そんなことは絶対にない。この傷をお前は自分につけた。脱狼薬を
飲む前からお前は肉体の欲求に勝利していたのだ」
私は首を振って否定したが、セブルスを抱きしめた。セブルスの纏う匂
いとセブルス自身を私は欲していた。セブルスも私の背に腕を回し抱
きしめ返してくれた。

(2015.2.12)
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