インタビュー

 ハリー・ポッターが手早く用意してくれた紅茶と菓子で休憩し
ている間もとりとめもない会話は続いた。
親友ロン・ウィーズリーの母親の作るお菓子の味の素晴らし
さやクディッチの試合について笑顔で話すハリー・ポッターは
どこにでもいる快活な青年そのものだ。決して気取ることな
く、さりげなく聞き上手でもある。明るい緑色の瞳はユーモア
を解してきらめき、相槌とともに癖っ毛も揺れていかにも楽し
そうだ。


Q.
読者からヴォルデモートに喩えていたピーター・パンとは
何者なのかという質問が多数きています。マグルの童話の
主人公だそうですね。


HP.あはは、これは失礼しました。マグルならいつまでも子ど
ものままでいたがって問題を起こしてばかりいる大人の比喩
だとすぐにわかるのですが。成熟することをを拒否している人
という言い方もできます。マグルの世界ではとても有名なお話
なんですよ。
魔法使いの家庭で育った学生はマグル学を必修科目にした
らいいんじゃないかな。逆にマグルの家庭で育った学生には
入学してから魔法と魔法使いについて学習できる科目があれ
ばいいと思うのですが。僕も入学時、あまりに環境が激変し
たのでかなり戸惑いました。もちろんとても嬉しくて興奮して
もいましたが。
今でも魔法使いなら誰でも知っているような
言い伝えには疎いんですよ。

Q.ホグワーツに入学するまで自分が魔法使いだという事を
本当に全く知らなかったのですか?


HP.ええ。両親は交通事故で亡くなったと聞かされて育ちま
したし、前にもお話ししたかもしれませんがマグルの伯母夫婦
は魔法全般を強烈に拒否していました。僕を絶対に魔法使い
にしたくなかった、というのは自分達がそういう世界と二度と
関わりたくなかったからです。
それでも時々、不思議なことはおこっていましたけれど。
刈り込まれてしまった髪の毛が一日で元通りになるとか無意
識に魔法を使っていたのですが、自分ではなぜなのかわから
なかったです。

Q.マグルは一日で元通りに髪を伸ばす事は不可能なのに、
それでも伯母夫妻は魔法を否定したのですか?


HP.ええ。常になかったことにするか怒っていました。魔法と
関わることが恐ろしくて仕方なかったのだと思います。

Q.ご両親の、特にお母様の写真などを見たこともなかったの
ですか?魔法の写真はなくても、お母様が子どもの頃のマグ
ルの固定写真はあったはずですが。


HP.
一度も見せてもらったことはありません。ホグワーツに
入学してから、ハグリットが僕のために両親の写真を集め
てアルバムを作ってプレゼントしてくれました。それは今も
僕の宝物です。

Q.伯母様が憎くはありませんでしたか?

HP.いいえ。子どもの頃にとても寂しい思いをしたのは事実
ですが、伯母にも姉妹としての母への思いがあったと思うの
です。そこに第三者が立ち入るべきではありません。
 僕がヴォルデモードが復活したと発言した時に、伯母は瞬
時に信じました。そして僕を家に置いておきました。伯母が僕
の母、妹のことを忘れた事はなかったのだと思います。
あの時、伯母が妹の息子である僕のことを守る決断をして
くれたことにとても感謝しています。

Q.自分が魔法界でとても有名な存在だったということも一切
知らされていなかったのですか?


HP.そうです。それはダンブルドアの意向でもあったようで
す。母の守護を万全なものにするために、母の血縁の者の
家に僕が引き取られる必要があったことは確かですが、絶対
にそうしなければいけなかったわけではなく魔法使いの家庭
で育てられたとしてもそれ相応の保護は受けられたはずで
す。しかし、ダンブルドアは僕が善意ある愛情にスポイルされ
てしまうことを望みませんでした。

Q.ダンブルドアはヴォルデモートが復活すること、再びあなた
と対決することを予見していた
ということですか?


HP.そうだと思います。ダンブルドアは同情や特別視されて
育つことは人間の健全な成長を損なうと考えていました。
ダンブルドアは僕の前で伯母夫婦に僕に対しての仕打ちを
非難しましたが、それでも魔法使いの家庭で育てられるより
はよかったと考えていたはずです。
はっきり言って僕とヴォルデモートの育った環境は似ている
のですよ。ヴォルデモート、いやトム・リドルは孤児院で愛情
を受けることなく育ちました。僕も似たようなものです。
しかし、両者には決定的な違いがあるとダンブルドアは理解
していました。僕は愛を持っていて、トム・リドルにはそれが
なかった。トム・リドルは生まれてから成長するまで、愛という
ものをまったく受けずに育ちました。

Q.母親の愛ということですか?

HP.僕が初めてダンブルドアからトム・リドルの生い立ちの話
を聞いた時にはそう思いました。
しかし、トムの母親は少なくとも、トムを生かしたいと願ってい
たはずです。孤立無援で絶望に打ちひしがれていた身で何と
か孤児院まで辿りつきました。そこに行けば、赤ん坊を育てて
くれると知っていたからです。出産し、名前をつけて亡くなりま
した。とても弱弱しい人だったかもしれませんが、その行動が
愛でないわけがないと思います。

Q.トム・リドルがいっそ生まれてこなければ良かったと思って
いる彼の被害者、遺族は多いと思いますが。

HP.それは勿論その通りです。僕自身、両親を彼に殺害され
ました。しかし、母親は別ではないでしょうか。自分の死の道
連れにしたり、隠して捨てたりはしなかったのです。見知らぬ
誰かに息子の未来を託すしかないほどか弱かったとはいえ、
トム・リドルの母親は息子にヴォルデモート卿になってもらい
たかったわけではないのです。
僕はヴォルデモート=トム・リドルが死後に罪を償うべきとい
う考えを否定しませんし、そうすべきだとも思っていますが、
彼の母親には彼のことを出迎えてやってほしいと願っていま
す。それはトム・リドルが生まれてから死ぬまでついぞ誰から
も与えられることがなかった愛情ですから。

(2012.2.6)

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