インタビュー

Q.ヴォルデモートについてどういった見解をお持ちですか?

HP.悪い意味で過大評価されているのではないでしょうか。彼はホグワー
ツ始まって以来の秀才の一人だったことに間違いはないでしょうし、罪の
ない人が大勢その犠牲になりました。しかし彼自身この世に生を受けた者
の喜び、楽しみを受け取る能力を持ち合わせていませんでした。僕は彼が
魂を分割してまで不死になろうとした理由がよくわかりません。暇ができた
ら幸福を探そうと考えていたのでしょうか。そこまで生に執着したわりに魔
法使いの寿命からすれば短命だったというのが結局彼の不自然な生き方
を表しているような気がします。
ホグワーツの森番ハグリットと彼は二才しか年の差がないんですよ。ハグ
リットは後のヴォルデモート、トム・リドルに罪を被せられてホグワーツを
放校処分になってから森番になりました。しかしそれこそ彼の天職でとて
も幸福に生きてきたのです。僕は時々彼の家に遊びに行ってお茶をご馳
走になりますが、魔法生物や植物に対する好奇心をいつまでも失わない
少年のような人柄でとても楽しい時間を過ごしています。
 それから万一真似をしようと考えている人がいたら忠告しておきたいの
は魂を分割する行為は自分自身にとって大変な損失だということです。
ホグワーツの2年生の少年に破壊されてしまうようなところに自分の魂を
入れておくべきではありません。魂は自分自身に宿るものです。彼と僕が
対決したと語られることが多いですが、彼が勝手に自滅したというのが真
相です。彼に対しての僕の印象は、生まれつき大切なものが根本的に欠
落していて、自分では一生その事に気づかなかった人です。今となって
は憎いというより気の毒な感じがします。

Q.ホグワーツの2年生にとおっしゃいましたが、あなたが特別な二年生
だったのではないのですか。

HP.いいえ、普通の少年でした。少しばかり怖いもの知らずなところはあり
ましたし、運動神経は良かったかもしれませんが平凡な子どもでしたよ。

Q.闇の陣営についてはどのように思われていますか?

HP.闇の陣営は純血の者が純血主義を標榜している集団だと思われがち
ですが、それは誤りです。今日では知られるようになってきたことですが、
ヴォルデモート、トム・リドル自身が混血なのです。父親がマグルで母親
が魔女でした。デスイーターにも混血の者がいましたし、ヴォルデモート
は勢力を拡大するために差別対象とされていた巨人族と手を結んだり、
ディメンターや僕も捕まったことがあるマグル生まれを捕獲していた人攫
いの連中も正規の教育を受けたことがなさそうなゴロツキでしたね。魔法
省の人間も多数いましたし混沌とした集団だったようですね。そして、純血
のしかも純血の中でも特に高貴とされる家柄出身の者への明らかな差別
がありました。ルシウス・マルフォイは杖を取り上げられ、まだ未成年だっ
たドラコは殺人の実行犯になることを強要されました。しかも失敗する前提
でという悪意の命令だったそうです。腹心だったといわれているべラトリッ
クス・レストレンジにしても汚れ仕事ばかりしている。本人がサディスティッ
クな性格でそうした仕事を好んでいたのかもしれませんが、腹心ならずっ
と側に置いておくものではないでしょうか。
これは奇妙なことです。おそらくヴォルデモートには純血の名家出身者に
対する嫉妬心があったのではないかと思います。それから純血主義とい
うとカルト的な思想に思われますが一時的にせよかなりの人数がヴォル
デモートの名のもとに集結したのですからその事実に対して今後分析して
いく必要があると思うんです。第二、第三の闇の陣営ができないともかぎ
りませんよ。

Q.ヴォルデモートのような人物がまた現れるということですか。

HP.
それも勿論あり得ますし、そもそも彼のような存在を潜在的に求め
ている人々がいるということです。そしてそれはスリザリン出身者という
ことではありません。

Q.スリザリンについてはどう思われていますか?

HP.まずスリザリン出身者が悪く思われるようになったのは歴史的に見
て最近の話だということです。トム・リドルが卒業してからヴォルデモー
トとして本格的に台頭してくるまでに二十年以上はかかっているでしょう
し、僕の親の世代の学生時代が彼が最も勢いを持っていた時代でしょう
ね。しかしスリザリン出身者がすべてデスイーターになったわけではあり
ませんし、またグリフィンドール出身者は全員不死鳥の騎士団に入って
いたわけではありません。スリザリンの寮監をしておられたスラグホーン
先生はデスイーターの勧誘を受けたくないばかりに居所を転々としてい
ました。逆にグリフィンドール出身で不死鳥の騎士団に所属していたピー
ター・ぺティグリューは闇の陣営に内通していました。スリザリンとグリフ
ィンドールは創始者にまで遡る歴史的な対立がありましたし、僕も学生時
代にはスリザリンに対抗心を持っていたものですが、どちらかが善でどち
らかが悪というものではありません。ヴォルデモートやグリンデルバルド
のような禄でもないことをしでかす人間は歴史的には定期的に現れるも
のですし、出自はそれほど重要ではないと思います。でもクディッチの試
合だと僕はグリフィンドール出身なのでグリフィンドールを応援しますけど
ね。それ以外だと特に何とも思っていません。

Q.今の答えで、デスイーターから不死鳥の騎士団員になったスリザリン
出身のセブルス・スネイプ氏の名前を出されなかったのは意図的な配慮
がおありだったのでしょうか。

ハリー・ポッターは記者の問いに眼鏡ごしでも明るく輝いている緑色の瞳
をまるくして見せた。記者はハリー・ポッターに直接確認したい情報をいく
つか持っていた。そのことについて彼が答えてくれるかはわからなかった
が賭けに出てみることにしたのだ。質問を続けていいか訊ねると、ハリー
はきちんと記者の目を見て首を縦に振った。

HP.どうぞ。でも僕の答えが面白いものになる保証はないですよ。


(2012.1.20)

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