インタビュー

HP.当時のクラウチシニアは魔法法執行部長として、闇の陣
営の逮捕者に対して厳しく罪を糾弾していました。このことで
魔法界の支持を集め、次期魔法大臣にとの呼び声も高くなっ
ていたことがクラウチシニアを自分の判断ひとつでシリウス
をアズカバンに投獄するという専横に走らせたのでしょう。
しかし、その事によって真実が一度闇に葬られたのです。
シリウスがアズカバンで生き延びなければ永久にわからな
かったかもしれません。


Q.シリウス・ブラックが脱獄した時、あなたがホグワーツの
3年生だった時ですが、あのアズカバンで十年以上も生き
延び、しかも正気を失わなかったことがシリウス・ブラックの
異常性を表しているのだと考えられていました。あそこに入
れられると大抵はそう長い時間が経たないうちにディメンタ
ーによって衰弱させられて死んでしまう。魔法界に死刑は
存在しませんが、実質的には刑期が長いほど同じことにな
るはずですから。
また、あの難攻不落のアズカバンを脱獄
したということもシリウス・ブラックの異常性ゆえに可能だっ
たと考えられていました。


HP.その事についてシリウスは自分が死ななかったのは
幸福ではなかったからだろうと僕に話してくれたことがあり
ます。
僕の父とシリウスは双子のようにそっくりと言われていた
親友同士でした。その父を殺害した濡れ衣を着せられた
のですから当然の話です。彼が脱獄を決意し実行したの
は、父の息子である僕に危険が迫っているのを知ったから
です。視察に訪れた魔法大臣にもらった新聞に偶然、ピー
ター・ペティグリュー
が載っていたのです。僕の親友ロンの
ペットのハツカネズミの姿でね。


Q.ハツカネズミ?

HP.もう時効だと思いますのでお話しますが、シリウス・ブ
ラックは未認可のアニメーガスでした。僕の父も、ピーター・
ペティグリュー
もそうです。彼らは親友の人狼リーマス・ル
ーピンのためにアニメーガスになったのです。満月期に隔離
されるリーマスと一緒に過ごすためにね。シリウスはアズカ
バンで一日の大半を犬になって過ごしていた。そして犬の
姿で檻から抜け出たのです。ディメンターは動物を認識
できませんから。そういえば、シリウスと同じ時期に投獄
されたデスイーターのベアトリックス・レストレンジやマル
シベールもアズカバンを生き延びて脱獄しているんですよ
ね。彼らもディメンターに吸い取られてしまうような幸福を
持ち合わせていなかったのかな。


Q.シリウス・ブラックとあなたのお父様、ピーター・ペティグ
リュー
はアニメーガスだったというのですか!しかも、学生
時代にアニメーガスになることに成功していたと。魔法省
に登録されているアニメーガスは一世紀に数人しかいない
はずです。それを一介の学生たちが習得していたなんて!


HP.
たしかに父たちには才能があったのだと思います。
それに怖いもの知らずでしたし、自惚れてもいたと思いま
す。法を破ることにスリルを感じていたのかもしれません
ね。そういう年頃ですから。でもアニメーガスになろうとし
た動機は友情ですよ。ダンブルドアは後にその事実を知っ
た時、喜んでいましたよ。ダンブルドアのような深慮に満ち
た人物はこれからもなかなか出てこないでしょうね。

Q.そうでしょうね。話を戻しますが、シリウス・ブラックは
裁判を受けずにアズカバンに送られたということでした。
その事が問題とされたことはありませんでしたね。

HP.その通りです。魔法省は都合の悪い過去については
できるだけ人目につかないところに保管しますからね。
僕は魔法省に入ってから調べてみたんです。魔法省は
最初にダンブルドアからの一報で、ゴドリックバレーで
僕の両親がヴォルデモートに殺害された事と僕が生存
していたことを知りました。おそらくポッター家の秘密の
守人がシリウス・ブラックだったこともダンブルドアは
魔法省に伝えたと思います。本当はシリウスはピーター
を秘密の守人にすればより完全にヴォルデモートを欺く
ことができると考え、僕の両親の承諾を得て秘密の守人
をピーターと交代していたのです。ピーターが闇の陣営
に内通していたことに気づかずにね。
そして、それ以前
にヴォルデモートを倒す者が現れるという預言情報は
魔法省に入っていたはずです。
 シリウスの行方を探していた魔法省の特殊部隊がシリ
ウスを見つける直前に、シリウスがピーターを見つけた
のです。追いつめられたピーターは「なんて事を!シリウ
ス、ジェームズたちを裏切るなんて!」と大声で叫び、目の
届くところにいたマグル数人を全員殺害し、自分の指を噛
みちぎってからネズミに姿を変えて下水溝に逃げ込んだ
のです。シリウスがピーターを殺害したという証言は、実は
ピーターの叫び声を聞いただけでした。
シリウスは状況証拠だけでアズカバンに送られたのです。
僕は、シリウスが冤罪で青年期の殆どをアズカバンで過
ごし、名誉を回復されることなく亡くなった事が今でも悔し
いのです。
僕のことを本当に大切に思ってくれていた優しいおじさん
でしたから。


Q.クラウチ氏の越権行為に対して深い憤りを感じておられる
ということですか


HP.はい。それは当時の魔法省の体質に対してです。クラウ
チ氏の独断でシリウスがアズカバンに送られた後、この事件
の捜査は打ち切られてしまいました。ゴドリックバレーのポッ
ター家の子ども部屋にはヴォルデモートの杖が転がったまま
だったのですよ!これを過失といわずには済まないでしょう。

Q.クラウチ氏は、結局、実の息子に殺害されたのでしたね。
自業自得だと思われますか。クラウチジュニアが非行に走
った原因は父親に愛されなかったからだといわれています。


HP.いいえ。僕はクラウチ氏が殺害される直前に偶然会った
のですが、その時の事を今でもよく覚えています。クラウチ氏
は監禁され服従の呪文をかけられているにもかかわらず、
ヴォルデモートが完全に復活しかかっていることをダンブル
ドアに警告しようと衰弱し朦朧としながらもホグワーツまでやっ
て来たのです。しかし、かなり混乱して時間の感覚もおかしく
なっていて
木に仕事を言いつけたりしていましたが、息子の
成績を嬉しそうに自慢していましたよ。それを聞いていたこと
もあって僕はクラウチ氏が息子を心底愛していなかったとは
思えないんですよ。息子の事を話している父親の声をジュニ
アが聞いていたらと思うのです。ジュニアが自分は父親に愛
されていないと信じていたことは確かです。そう言っているの
も聞きました。死期の迫っていた母親の願いをきいて自分を
助けたのだと言っていましたね。結局、息子に向き合うことを
避け続けてきたことによる悲劇だったのではないでしょうか。
クラウチジュニアは実の父親が自分を見てくれない反発か
ら、偽の父・ヴォルデモートの忠実な僕になってしまったの
でしょう。


(2012.3.6)

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