Letters

ルシウス・マルフォイから
         F・マルシベールへ             1972年1月某日

 ナルシッサ・ブラックと婚約することが正式に決まった。発表はもう少し先
になるが、悪友の貴様には先におしえておこう。
 あらためて言うまでもないが、ナルシッサはブラック姉妹の末娘だ。
私が生まれた時から、ブラックの娘と結婚することは決まっていたのだが、
適齢期になった時点でもっともふさわしい相手を娶ることになっていたの
だ。年齢順では貴様もよく知っているベラトリックスだった。私より年上だ
が、10歳以内の年の差ならば子をもうける障害にはならないし、姉妹を持
つ親は上から順に結婚させたいものだ。
ベラトリックスは、美男美女で知られるブラック一族の中でも、最高の美女
と誰もが認める女だが、狂信的な純血主義者だ。私だとて、この身に流れ
る血の正統性に誇りを持っているが、あの女は異常だ。女の身でデスイー
ターの実行部隊を率い、おまけにブラック一族に生まれながらグリフィンド
ールなぞに入った愚かなシリウスと恐ろしくよく似た容姿をしている。双方
輝かしい美貌の持ち主たちだが、どちらも中身が大問題だ。おそらく長年
にわたる近親婚の弊害ではないかと思う。ベラトリックスは例のあのお方
の強い薦めで、同じデスイーターのレストレンジと結婚することになりそう
だ。これも公になるのはもう少し先になるので貴様も他言無用だ。
次はアンドロメダだったが、彼女は身分違いの相手と駆け落ちして勘当
になった。
 ナルシッサは、姉たちが両極端に強烈な個性で目立っていたので、おと
なしい印象があったのだが、二人きりで会話してみると、その年齢以上の
教養の深さ、一見控え目に見えるが意志の強さ、優雅な物腰に精緻な美
貌と、彼女と縁組みする巡り合わせになった自分の幸運を神に感謝せず
にはいられない。
 ところで結婚式の招待状にも貴様の名前を書いてはいけないのか?
いっそ改名でもしたらどうだ?



 F・マルシベールから
        ルシウス・マルフォイへ           1974年12月某日

 貴様からの手紙を読んだ。貴様の独身最後の降誕祭パーティとあっては
出席するしかあるまい。しかし、パーティの花形は間違いなくナルシッサ嬢
だろう。素直に貴様の幸運を祝福しておく。
 そういえば、スネイプも招待したそうだな。あいつは社交界のことなど何
も知らないだろうから、さぞかし困惑しているだろう。
隅に畏まっているのを、連れ出して手取り足取り作法をおしえてやるのは
悪趣味だが、面白そうだ。スネイプとは我々が卒業して以来会っていなか
ったから、夏に貴様の家にあいつが来ていたときには驚いた。しばらく見
ないうちに随分と背が伸びて、声が掠れ気味だったのは、変声期に入りか
けていたからだろう。俺たちより、成長が遅い気がするが、ホグワーツにく
るまでの環境があまりよくなかったせいで発育不良気味だったのかもしれ
ないな。
 貴様がスネイプに何かと構って世話を焼く物好きにはいつも呆れていた
のだが、それなりに効果はでているようだな。あの時、あの子に目を付け
ていた男はたしかに一人や二人ではなかった。スネイプ自身はまるで気づ
いていなかったが。あのほっそりとした腰や臀に、男がどんな視線を送っ
ているのか本人はご存じなしだ。
下はもう生えているのか訊いたら、何のことかしばらくわからないでいた
が、それとわかると激怒して呪いをかけてきて、俺を面白がらせた。いつ
でも揶揄い甲斐がある奴だ。降誕祭でもきっと退屈するまい。
最後に俺の名前のことだが、書くのは仕方ないが声には絶対に出すな。



ルシウス・マルフォイから
            F・マルシベールへ         1974年12月某日

 あの子も鈍いが、貴様も大概だと思うぞ。この一年ほど、私と貴様であ
の子を巡って恋の鞘あてをしていることになっているのだ。噂の出所は、
私だ。セブルスは色事には疎いし、私も婚約してから忙しいので始終付き
添ってやれないのでね。私と貴様と張り合おうと名乗り出る勇気がある男
はなかなかいないだろう。
 あらゆる意味で私の予測を遙かに越えて成長しつつあるセブルスだが、
本人は闇の魔術の研究に夢中だ。
私としては、あの子が誰かとそういう経験をしてくれた方が手を出しやすい
のにと思ったこともあるのだが、頭に血が上った馬鹿どもに掌中の珠を台
無しにされては不愉快だ。異性でもいいが、通過儀礼として同性との恋愛
は経験してみるべきだ。
それでは、降誕祭での再会を心待ちにしている。

(2011.6.20)

 

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