インタビュー

Q.これは失礼を承知の上での質問ですが、あなたとヴォル
デモートの繋がりについてです。あなたはヴォルデモートが
意図せずに作ってしまった分霊箱だった。すべての分霊箱は
破壊されたと魔法省は発表しましたが、そこにあなたは含ま
れているのでしょうか?

HP.この問題については僕の方から説明しておくべきでした
ね。質問に感謝します。僕が分霊箱だったのは事実ですが、
正確にいうとこのヴォルデモートによってつけられた傷にヴォ
ルデモートの魂の欠片がついてしまったのです。だから完全
なものではありませんでした。ヴォルデモートは分霊箱を作る
ために赤ん坊だった僕を殺そうとしたわけではなかったから
です。僕は本来ヴォルデモートの才能であるパーセルマウス
が使えましたし、傷を通してヴォルデモートと繋がっていまし
た。常に通じ合っていたのではなく、閉心術で遮断することが
可能だったのでダンブルドアの指示でスネイプ教授に閉心術
の授業を受けました。僕は出来の悪い生徒で教授にずいぶ
ん迷惑をかけてしまったのですが。
 僕がヴォルデモートから死の呪文を受けたのは最初と最後
が有名ですが、最後の直前にも受けています。僕はその時
には自分が分霊箱だと知っていましたし、自分が死ななけれ
ばヴォルデモートの魂も生きることになるとわかっていました
のでその覚悟はできていました。そうするしかないわけです
から。僕は甘んじてヴォルデモートの死の呪文を受けて倒
れ、彼は手下に僕の生死を確かめさせました。宿願だった
僕の死を他人に確かめさせたヴォルデモートの迂闊さが
今でも信じられませんが、その者が裏切ったのです。僕は
生きていました。それも無傷でね。

Q.お話の途中で申し訳ないですが、あなたの検死を行なっ
たのは誰なのですか。ヴォルデモートを裏切ったのですよ
ね。

HP.ナルシッサ・マルフォイです。ナルシッサ・マルフォイは
行方がわからなくなっていた息子のドラコを心配して、僕が
生きているとわかると息子の安否をこっそり尋ねてきました。
僕が彼は城の中にいると教えると、僕が死んでいると嘘を
大声で宣言しました。ヴォルデモートがホグワーツに凱旋
するのに乗じて城に入り、息子を保護するためです。ナル
シッサ・マルフォイにとっては決戦の勝敗などどうでもよか
ったのです。夫のルシウスは失脚し、純血の名家の誇りは
踏みにじられ、もはや息子の無事だけを願っていたのだと
思います。

Q.なるほど。マルフォイ夫妻はデスイーターの幹部であり
ながら、決戦後に逮捕を免れていましたね。この功績によっ
て何らかの配慮がされたのかもしれませんね。

HP.それは僕にはわからないことですが、たしか服従の
呪文をかけられていたという内容で聖・マンゴの癒者の
診断書が魔法省に提出されて、決戦後の一定期間、ルシ
ウス・マルフォイは聖・マンゴの貴賓室に入院していた
とはきいています。

Q.話を戻しますが、あなたにはヴォルデモートの呪文が
効かないのですか。

HP.いいえ、正確に言うとヴォルデモートの死の呪文だけ
が効きませんでした。クルーシオなどの呪文では結構痛い
目に遭いましたよ。あの最後の直前の死の呪文でヴォル
デモートが殺したのは僕ではなくて、僕の中の彼の魂の
欠片です。彼はそのことに僕が実は生きていたと知った
後でも気づきませんでした。もう一つの分霊箱、蛇のナギ
ニがネビル・ロングボトムにグリフィンドールの剣で切られた
時の方がまだ動揺していました。あの蛇にはヴォルデモ
ートなりの情をもっていたのかもしれませんね。他の分
霊箱を破壊する瞬間にヴォルデモートが気づいたことは
なく、そのことからしてもいかにヴォルデモートが人とし
て不完全なものに成り果てていたかわかりますよね。
普通の人ならば小指にトゲが刺さっても痛みを感じます
よ。そういうわけで最後に対決する時には僕は落ち着い
ていました。二度あることは三度あると思ったのではあり
ませんが、ヴォルデモートが自滅するか、僕が死んだ
としても後は実は死に体のヴォルデモート本人だけな
ので不死鳥の騎士団が力を合わせれば倒せると思いま
した。僕はこのインタビューでも前にお話しましたが、闇の
魔法に対する防衛術の教授だったルーピン先生とスネイ
プ先生に協力をお願いしておいたので何とかしてくださる
だろうと信じていました。
僕にヴォルデモートの死の呪文が効かなかった理由で
すが、おそらく本気の度合いによるのではないのでしょう
か。

Q.本気の度合い?それはヴォルデモートがあなたを侮っ
て油断していたという事ですか

HP.いいえ。ヴォルデモートは何時でも誰に対しても本気
で死の呪文を唱えて殺害してきたのだと思います。強い意志
を込めなければ、闇の魔法もそれを防衛する呪文も完全な
力を発揮するものではありません。赤ん坊だった僕がヴォ
ルデモートの呪文を弾き返したのは、僕の母が文字通り命
を懸けて僕を守護する呪文をかけてくれたからです。しか
しそれは例えばマグルのお母さんだったら、子どもが外で
怪我しないように心配するとか、寒いからもう一枚厚着させ
るとかそういう他愛もないような思いやりですが、僕の母が
僕にかけた呪文と本質は同じです。ヴォルデモートの僕を
殺そうという意志より、母が僕を守る意志の方が勝ったの
です。
 残りの二つの死の呪文を受けてで僕が生き残ったのは
ヴォルデモートがダンブルドアの墓から奪った杖の真の
所有者が実は僕だったので杖の忠誠心が僕に死の呪文
をかけなかったからだといわれています。もしくはヴォルデ
モートが復活する際に僕の血を使ったので、僕の母の守護
がヴォルデモートの体内に入り、彼が死なない限り僕もま
た死なないことになっていたとも考えられています。でも、
僕はこれとはちょっと違う思いがあるのです。最後の直前
の対決の時には、僕はある意味母と同じ事をするつもりでし
たし、やり遂げる覚悟でした。その覚悟がヴォルデモートの
死の呪文の効力より勝っていたのだと思います。だから僕の
中のヴォルデモートの魂の部分だけに呪文がかかったの
でしょう。最後の対決の時には、僕が唱えるべき呪文はわか
っていました。「武装解除」です。それで十分だと信じていま
した。

Q.当時、十代の少年とは思えない冷静さですが、見事な
結末でしたね。魔法使いの歴史にいつまでも残ることになる
でしょう。

HP.僕は本当にたくさんの人たちに守られていたのででき
たことですよ。ヴォルデモートの犠牲になられた方々への
哀悼の念はいつも心にあります。でも、100年後くらいの
魔法史のテストでこの事件の問題が出たら絶対に間違え
る子が出るだろうなぁ。ヴォルデモートとグリンデルバルド
が決闘したとか、ダンブルドアとヴォルデモートは対の魂
の持ち主だったとか奇想天外の回答を書く子は確実にい
ますね。歴史なんてそんなものですよ、きっと。

Q.そうならないことを祈ります。ヴォルデモートが滅びた
後で、あなた自身の変化はありましたか?

HP.パーセルマウスではなくなりました。元々、ヴォルデモ
ートの才能だったものが僕の中にあっただけなので、それが
消えただけです。蛇と会話できなくても日常生活に何の不自
由もありませんね。それと当然ですが傷が痛まなくなりまし
た。これもありがたい変化です。それまで頭痛薬が全く効か
なかったので。

Q.あなたは今でもヴォルデモートから取り上げたニワトコ
の杖を使っているのですか。あの杖は歴史的にも世界最強
の杖だといわれていますが、あの杖の持ち主は必然的に
最強の魔法使いということではないでしょうか。

HP.現在あの杖は魔法省が厳重に管理しています。
手に入れようと企む人がうんざりするほど強力な呪いを幾重
にもかけられているので諦めた方が賢明です。グリンデルバ
ルドはこの杖をもってしてもダンブルドアとの決闘に敗れまし
たし、ヴォルデモートの末路はみなさんよくご存知なので今
更いうまでもないことだと思いますが。
 僕はホグワーツに入学する時にオリバンダーの店で選んだ
杖を使っています。僕の手に馴染んでいますし、とても使い
やすい杖です。

Q.その杖はヴォルデモートが元々使っていた杖と兄弟杖
だと聞いたことがあるのですが、そのような因縁は気になり
ませんか?

HP.たしかに僕の杖とヴォルデモートの杖は兄弟杖です。
芯にダンブルドアの飼っていた不死鳥の尾羽が使われ
ています。ぼくはヴォルデモートとお揃いの杖というより、
ダンブルドアの不死鳥の尾羽が使われている杖だと思って
いるのです。子どもの頃はそんなこととは知らずに使って
いましたが、知ってからは今まで以上に愛着を感じていま
す。僕は、校長室で不死鳥が復活するところを見たことが
あるのですが、あれほど美しいものはなかなかないです
よ。不死鳥をペットにしていたなんて、ダンブルドアという
人は本当になんて人だったのでしょうね。今世紀もっとも
強力な魔法使いはダンブルドアではないでしょうか。グリン
デンバルトに勝利し、ヴォルデモートは相手にもならなかっ
た。ええ、僕はヴォルデモートがダンブルドアに向かってい
くところを見たことがありますが、とても互角といえるもので
はありませんでしたよ。そして、権力の座につくことを固辞し
続け、教育者として生涯を終えた。本当に見事な人です。

Q.あなたは自分もダンブルドアのように自制した人生を
送ろうとしているのでしょうか

HP.僕は元々取り立てた才能を持ち合わせていませんよ。
成績も平凡でした。クディッチは得意でしたし、必要に迫ら
れて努力してできるようになった事はありますが、特別な
魔法使いではありませんよ。現在、闇払いの職について
いるのは、そこに僕の適性があったからです。

Q.最後に、あなたはハリー・ポッターで良かったのです
か。もっとべつの人生を送りたいとは思いませんか

HP.僕は僕で良かったです。ちょっとは大変なこともあり
ましたけどね。


 インタビューを終えて、ハリー・ポッターと再び握手を交わ
した。節くれ立ってあたたかい手だった。この十年間、彼に
ついての情報は秘密のベールに包まれていた。とても気難
しい人物かもしれないと思われていたが、実際の彼は気さ
くでよく笑い、謙虚で誠実な青年だった。また、いつかインタ
ビューの機会をと頼むと、もう全部話してしまったからなぁと
困った顔をしていたが、最後にはまたいつかねと約束してく
れた。でも、そのうち僕のことなんか記事にしても誰も読まな
くなると思うよと屈託なく笑っていたが、この魅力的な魔法使
いにのことを魔法界が忘れてしまう日など決してこないだろう。

【完結】

捏造につぐ捏造で本当に申し訳ありませんでしたm(__)m
(2012.3.23)

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