Make Love 

 意識が不意に戻って瞼を擦りながら、サイドテーブルの上の時計を見
るとそれほど長い時間眠っていたわけではないらしい。裸だったが、恋人
と身体を寄せ合っているので寒くはない。腕の中でセブルスは静かに
横たわっていたが、僕が目を覚ました事に気づくと、もぞもぞと離れてい
こうとするので片腕で引き寄せようとすると面倒くさそうな声で、

「腕枕はこちらの首が凝るのだ。おまえの腕も痺れているはずだ」

と文句を言ってきた。身体を合わせた後、まだ動けないセブルスの後始末
をしてから黒髪やしっとり汗ばんだ肌に口づけて余韻を楽しんでいるうちに
眠ってしまったのだ。元々寝付きはすこぶるいいのだが、セブルスの身体
の匂いを嗅いだり、体温を感じているとひどく安心してしまうのだった。

「離れるのはさびしいよ」

と言うと呆れた表情をされたが気にしない。セブルスの薄い唇を自分の唇
で塞いで舌をからませて吸うと、セブルスも応じてくれる。何度か唇を擦り
合わせてから、顔を下にずらして桜色の突起を口に含んだ。

「あっ、もうやめろ…」

拒む声を無視して吸いつきながら、もう片方の突起を指先で摘んで軽く潰
す。セブルスは時折溜息まじりに呼吸を乱しながら、僕の頭にそっと手を
まわして髪をまさぐって刺激に耐えていた。突起が赤く色づき形を変える
と、もう片方を口に含んで吸いながら、あいている方の手をしっとりとした
肌に這わせた。セブルスの身体は一度愛し合った後で敏感になっていた
ので、すぐに堪えきれなくなって切ない声をあげはじめた。密着している
下肢からお互いの昂りが伝わってくる。セブルスの昂りの奥に手を差し
入れて秘密の入口を探り当てる。今夜は既に一度受け入れてやわらか
く緩んでいる蕾は指を容易に飲み込んでいく。湿った粘膜は無骨な指を
何度か抜き差しするとすぐに熱をもって締め付けてきた。指を増やして、
奥までぐっと入れるとほっそりとした白い腿がびくりと痙攣する。時々、
セブルスが我を忘れるほど感じる窪みを押すと艶やかな悲鳴があがった。
セブルスの乱れる姿に煽られ余裕がなくなったので、指を抜き昂りを押
し充てた。ぐっと力をこめて挿入して繋がる。セブルスの息が落ち着く
のを待って、腰を動かし始めた。

「あっ、あっ、あぁ」

広げさせた細い両足を抱えあげて、激しく突き上げる。じっくりと時間をか
けて愛撫を施して乱れる姿を楽しむのもいいが、性急に求めて受け止め
てもらうのもいい。きつく締め付けてくる熱い粘膜の収縮に導かれて、白濁
を奥に注ぎこむのと同時に、セブルスも悲鳴をあげて達して僕の腹を白く
汚した。達したばかりで恍惚としているセブルスの顔や首、指先、目に付く
ところに口づけていく。敏感になっている身体がびくびく震えて応えるのが
愛しくて、唇で熱心にセブルスの感じるところを探し続けた。最後に細い
腕に導かれて長い間口づけ合った。
 もう一度セブルスの身体をきれいにしてから自分の後始末も簡単に済ま
せて寝台に戻ると、そこにはこの上なく不機嫌なセブルスがいた。抱き寄
せようとすると、すげなくしっしっと追い払われる。

「まったく、いつも性欲だけは一人前以上だな。こんなことが続くならば毎晩
おまえに金縛りの術をかけておかねばならない。明日は朝から脱狼薬を
煎じなければいけないと言っておいただろう!」

自分も積極的に楽しんでいたことを完全に棚に上げて叱責してくるところが
セブルスらしいが、下手に口答えすると拗れるのが目に見えているので、
ごめんね、どうしても我慢できなかったんだよと素直に謝ると、ふんと鼻を
鳴らして背を向けられた。きれいな肩甲骨のラインに欲情しかけたが、もう
一度仕掛けるのは流石に控えておいた方が無難だ。二、三日は腰がだる
いだの、あそこが腫れて痛いだのと不機嫌だろうが、そんなことを気にし
ていてはセブルスの相手は務まらない。しばらくはおとなしく機嫌をとって
おこう。一緒に暮らし始めてからもう何年もたっているのに、セブルスの
異常なまでの羞恥心は変わらない。それでいて、官能に乱れる時には
躊躇なく溺れるのだから始末に終えない。そういうかなり面倒なところが
好きなんだけど。さしあたっては、明日の朝、この部屋まで珈琲を届けた
方がいいのか、さりげなく先にキッチンにいて顔を見てから淹れて出す方
がいいのかという問題があるが、前者だと特別扱いに羞恥心の発作が
おきる可能性が高いし、後者だとキッチンまで歩かせた事を詰られるだろ
う。一度、今夜のように愛し合った翌日にセブルスの好物ばかりを盆に
載せて寝室まで運んだら、照れ隠しが反転して激怒された事がある。
あの時は、本当に大変だった。毛布を慎重にセブルスの肩にかけ直して
からも枕の上の黒髪を見つめながら明日恋人にする世話についてあれ
これ考えを巡らせていたのだった。

(2012.4.6)

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