喪失

 古風な彫刻が施された椅子にゆったりと寛いだ様子で座るダン
ブルドアは自身の長い白髭を弄んでいた。空色の瞳はいつもとかわ
らない。その前にいつものように黒衣のスネイプが跪き、老人の両足
の間にその顔を埋めていた。スネイプは薄い唇を開いて老人の男性
の象徴を根本まで咥えてから頬を窄めて吸い上げた。そればかりで
なく赤い舌をちろちろ這わせて裏側まで丁寧に舐めあげる。スネイプ
の口唇での奉仕により老人の性器は固く聳え立った。もう一度薄い
唇が形を変えたダンブルドアの象徴をくわえて射精を促す動きに入っ
た。長い髪が青ざめた顔に落ちているのにも構わず懸命に奉仕を続
けるスネイプの顔を空色の瞳で見つめながら、皺だらけの手で乱れ
た髪を直してやるダンブルドアは優しげだった。息が乱れ、瞳が情欲
に曇っているにしてもいつもと殆ど変わりない様子だった。黒髪を皺
だらけの手で押さえて自身の熱を解放する為に動かした。スネイプの
喉奥を数度容赦なく突き上げると熱い欲望を放出した。スネイプはご
くりと喉を鳴らして飲み下すと唇を窄めてすべて吸い上げた。やっと
半分終わった、とスネイプは虚ろに考えた。

「次はセブルス、君の番じゃ」

 黙ってローブの下の衣服と下着を脱いでダンブルドアの前に立っ
た。節くれ立った指が手慣れた様子でローブを捲るとスネイプの白
い身体に触れてきた。自分の身体を熟知している指に弄られると
簡単に熱くなる。すぐに反応を見せるスネイプを面白そうに見つめて
からダンブルドアは膝に乗せて愛撫を続けた。スネイプはダンブル
ドアの指先に敏感な乳首を摘まれて声を出すと、ぎゅっと捻られた。
痛みと快感に涙が零れる。両方の乳首を散々嬲られた後は口に含
まれて時間をかけて吸われた。老人の赤子のような振る舞いにスネ
イプは耐えた。疎ましさが欲情を煽る自らの性癖こそが滑稽だった。
身体をくねらせ解放を強請る。老人はスネイプの性器の根本を輪で
締め付けて悶える様を見て楽しんだ。白い小さな尻を揉みしだき、蕾
に指を這わせた。ダンブルドアはスネイプの蕾を使ったことは一度も
ない。指を入れて調べられる事はあったが、ダンブルドア自身がスネ
イプの中に入れられたことはなかった。そもそもこのダンブルドアの
私室での性的な行為は、スネイプが闇の陣営から不死鳥の騎士団
に寝返ってスパイになった頃に始まった。スネイプが闇の陣営から
戻るとダンブルドア自らが身体検査をした。それが今に至るまで続
いているのだ。徐々に性的な行為に変化していったが、この秘密は
二人を密接に結びつけた。弄ばれて官能に喘いでいるスネイプの痴
態を、年老いた魔法使いは欲望に濁った目で見つめてじっくりと楽し
んだ後、象徴を戒めていた輪をやっと外した。悲鳴を上げてスネイプ
は皺だらけの手の中で果てた。
ダンブルドアはどろりとした精液をスネイプの白い腿と性器に塗り
込めてから下着をつけた。下着は濡れて濃く染みたが、その上に
衣服を着せて整えてやる。

「セブルス、今夜はこのままお帰り。廊下で生徒を誘惑してはいか
んよ」

ダンブルドアは慈愛に満ちた表情でそう言うと、おやすみのキスをス
ネイプに与えた。スネイプは呼吸を整えると、まるで何もなかったか
のように部屋を退出した。腿から足首まで精液が滴ってきて気持ち
が悪い。厚いローブに包まれているとはいえ匂いも気になる。早く
地下の自分の部屋に帰りつきたい一心で足を早めた。途中で、何か
の気配を感じたような気がしたが何も見あたらなかった。階段を下り、
地下の自分の部屋に辿り着くと鍵をかけた。

「今日は罰則の約束はなかったはずだが、ミスター・ポッター」

癖の強い黒髪に緑の瞳に眼鏡をかけたハリー・ポッターが、スネイプ
のベッドに腰掛けていた。夜更けという時刻のせいか、口元にうっす
ら髭が生えかけていた。もう少年というより既に青年になりかけてい
る。

「約束がなくても会いたかったから来たんです」

ハリー・ポッターは、スネイプを真っ直ぐに見つめて言った。

「何の用か知らないが出直せ。私は疲れている」

鍵を開けて退室を促した。ハリーは立ち上がると扉の方に向かわず
スネイプを強く抱きしめてきた。抵抗する隙を与えずに口づけてくる。
唇と唇を合わせて舌を絡ませ合う。それだけでスネイプはハリーと
身体を一つに合わせる時の陶酔感を味わっていた。知らない間にロ
ーブに差し入れられた手がスネイプの秘密に触れた。衝撃を受けた
ハリーはベッドにスネイプを押し倒した。ローブの中に隠されていた
濡れた身体が暴かれた。

「誰かと寝たの?」

固い声が尋ねた。

「それがどうした、おまえはしないのか」

スネイプは、両足を広げて誘った。いつもハリーに対してこんな風に
挑発してきた。今度もそれでやり過ごすしかない。腿の白濁が乾き
かけてきたが、そのまま無様な格好を晒し続ける。
ハリーが寝台のスネイプに覆い被さるように近寄ってきた。以前のよ
うに自分の身体を罰するのだろうかと一瞬考えたスネイプにハリーは
再び口づけてきた。あたたかくて、どこか泣いている子を慰めるように
優しかった。毛布をスネイプの裸体にかけるとそのまま部屋を出てい
った。扉が閉まる音がして、やがて靴音が消えるとスネイプは頭まで
毛布を被った。どのような情けない顔をしていようと誰にも見られない
ように。そう考えた自分をスネイプは嘲笑した。この部屋にいるのは
自分一人しかいない。もうハリーはここには来ないだろう。もっと早く
にこうなるべきだったのだ。しかし、例えようもない喪失感がスネイプ
を蝕んでいた。

(2011.12.6)
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